麻雀放浪記(一) 青春編

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男の生き方の1つ
麻雀やチンチロといった、賭博を題材にしていますが、その背景にある、復興期の男の生き方(女の生き方も書かれています)に共感を覚えます。正確に言うと、共感というよりは、憧れなのでしょう。家庭も持たず、サラリーマン的な雇用関係もなく、腕一本で生きていく。こんな生き方をしたいと思う一方で、ドラマや映画のような憧れでしかない、とも思うのです。
麻雀好きなら間違いない1冊
終戦直後の東京で、自分の腕一本で生きてく博徒たちの結託と裏切り、生き様を描いた小説。
終戦直後、焼け野原の東京。闇市もまだなく浮浪者であふれかえった埃っぽいドヤ街で、青年哲は金ほしさから博打の世界へはまっていく。
昨日イカサマ業を教わった男を今日はカモにする。一緒に組んできた男にハメられる。それが日常となっていく哲と博徒たちの生き方には、現代にはなくなった独特の熱があってなんともかっこいい!!
勝負のかたに自分の女を売り、売られた女は「あの男は本物のろくでなしで、すごく魅力的なの…」と懲りずに言う(そんな台詞、死ぬまでに1回でも言ってみたい)。
勝負の最中に突然死んだ相手のみぐるみを剥いで、一切を着服する。あげく出てきた言葉が「奴は死んだー。つまり、負けたんだ。負けた奴は、裸にならなくちゃいけねさ。」「誰だってこうしてるんだよ。死ねば皆に食われちまうんだ」
それでいて、登場人物たちは死んだ相手をうらやましく思っている。自分もこんなふうに死にたいと…。
なんとも恐ろしい。恐ろしいくらいに最高のピカレスクロマンだ。
1点残念だったのは、勝負のシーンは本来ならばすごく読ませるところなのだろうけれど、悲しいかな、麻雀のルールを知らない自分はいまいち入り込むことが出来なかった。図解で雀牌の並びを説明されてもチンプンカンプンだし「ポンしたいんじゃない。アンコにしたいんだー」等のセリフも多量に出てくるが、やっぱり全く分からない。
心象風景や「チクショウ!」とか「クッ」などの台詞から勝負の優劣を読み取るのが関の山といったところか。続編はぜひとも麻雀を覚えてから読みたいところだ。
最後に台詞をもう一つ。
「これがとられたら、俺ァ飢え死にだ。面白えね!博打はこれだから面白え。死ぬも生きるもサイの目ひとつ、どうせなら、こんなふうに簡単に死にてえものさ」
最高のピカレスクロマン
ピカレスクロマン(悪漢小説)という言葉を、日本で一番多く受けたのが阿佐田哲也だろう。
阿佐田哲也は、ナルコレプシーという難病を患っており、治療代を稼ぎたい一心でこの
ペンネームでピカレスクロマンを書き始めたらしい。ペンネームの由来が、いつも徹マンで気がつけば「ああ、朝だ、徹夜だ」から来ているというのがふるってる。
本名の色川武大で書く小説は、ご存じのようにシリアスな内容であり、ペンネームで内容を切り分けていたのみならず、奥さんが書いた本「うちの宿六」では、マス目に書き込む字の大きさまで変えていたことが書かれている。
「麻雀放浪記」が出たばかりの頃、その圧倒的面白さに皆のめり込んで一気に全冊を読了し、興奮したものだった。
麻雀卓を囲む友人もみんなこの小説は読んでいて、
「おれは今日は坊や哲だぜ」「じゃあ、おれはドサケンで」、「あ!この中放充での三家和で流れるのは、阿佐田哲也の『東一局五二本場』に出てきたのと同じだな。俺もたいしたもんだ」などと言って喜んでいたものだ。
なにせ、ピンズだのマンズだの麻雀パイ配譜の絵が出てる小説なんて、阿佐田さんの前にはなかった。この分野のエンターテイメントを切り開いたのはは、間違いなく阿佐田哲也であり、彼のすべての作品が素晴らしく面白い。
2000年に出されたこの文庫本でも、昔と変わらず黒鉄ヒロシのイラストがカバーを飾っていて嬉しい。
もし読んだことのない人や、映画しか見たことがない人がいたら、是非読んでみてください。
こんなに楽しい娯楽小説は、そうそうないですよ!